【おたよりコラム】なにもないところから

 つかつかつか、ぶちっ、そんな音がしてテレビの中のキャラクターは動かなくなった。小学校の高学年の頃だろうか。家でテレビゲームをしていたときのことだった。三尾家のルールはゲームは最長1日30分と決まっていた。でもやりはじめると30分なんてあっという間。「あとちょっと!もう少しでセーブできるから」もう時間だよと制限時間が来たことを伝える母に対して、なんとかあとちょっと、と粘る。その時だった。ゲームのコントローラーと本体をつなぐコードがハサミで切られたのだ。なにも声は出なかった。「やめなさい」「約束を守りなさい」などの言葉以上の衝撃だった。あとちょっと、明日やろう、などそんな希望もなにもない「あ、おわった」という感覚。ルールを守らなかったこと、母親の話をきかなかったこと、こうなってしまった理由が完全に自分にあったことがわかっていたので、母に怒ることすらできなかったように思う。振り返ってみて、今は思う、それでよかったのだと。隠されると探したくなる。できないという状況が私にとっては正解だったと思う。  なにかにはまることはとっても大切なこと。でも、はまることには2種類ある。自分で楽しさを見出して、のめり込むようにはまることと、はまるようにつくられているものに流されるようにはまっていることは大きく異なる。前者は、スポーツ、折り紙、お絵描き、料理、パズル。後者はそこに心理学の知恵が商業にからんで乗っかっているもの。youtubeやゲーム、各種SNSなどがまさにそうだと思う。ゲーム依存、ネット依存は精神疾患のひとつとなっているが、これは本当に身近で大きな問題。小学校高学年から中学生ぐらいの男の子で毎年何人も相談される。実際に子どもたちをみていて思う。イライラしやすくなり、会話がうまく成り立たなくなる、周りと協調することがうまくできなくなり、生活リズムがみだれる、考える力が弱くなり、集中も続かなくなる。次第に母親に対して強い態度をとるように変わっていく。みていて苦しくなる。ゲームや動画の視聴はものすごく楽しい。それは本当にその通りだと思う。でも、こればっかりは本当に気をつけて欲しい、はまるように作られているし、脱するのにものすごく苦労することになる。早い年齢からゲームや動画視聴に触れている子ほど依存症になりやすくなるとも記されている。  もうあと少しで夏休みがやってくる。家でのダラダラ時間や、外でのちょっとした待ち時間に、ゲームや動画視聴は時間潰しにはもってこいの道具だと思う。でもそこで画面に向かうのではなく、会話を楽しんだり、体を動かしたり、なにかを探したり、絵を描いたりして欲しいなと思う。ぜひやってほしいのは、与えられたものがない環境で自分で遊びを作り出すこと。海に川に山に原っぱ。そこにはいろいろあるけれど、決められたものや遊具はなにもない。そういったところで、「なにもすることないじゃん」とならず、「あれしたい!これしたい!」とやりたいことをみつけてやってみる。大人になると、あたりまえやこうして遊ぶなどという固定観念に縛られてしまうから遊びの幅は有限になる。子どもたちこそ、しばりがないから遊びは無限。学校の校庭で、公園で、鬼ごっこ。まさに最高の遊びだと思う。一緒にいる人と「ここは入っちゃダメ」「このエリアはバリアゾーンね」そんなオリジナルのルールを決めて、共有する。やってみてルールが変わる。「そのエリアは10秒しかいちゃダメね」「すぐタッチされた人にし返すのはなし」遊びをみつけ、その場に合わせてルールを作り出し、変えていく。それこそが最高の経験。そんな自分でみつけ、作り出す経験をたくさんして欲しい。いつも通りの安心を感じながら、たくさんのはじめてに挑戦し、たくさんの経験を積み、 夏休み明け、こんなことあったよ!と最高の笑顔で話す子どもたちを想像しながら、教室で再会できることを心から楽しみにしています!最高の夏休みを!             三尾 新

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