【おたよりコラム】自分の一部に

 「みおはひとくちでみかんぜんぶ食べちゃいそう」しばふハウスに置いてあるみかんをみつけた小学生の子に言われた。まったく三尾をなんだと思っているのだろうか?そんなことを思いながら、「みかんはね~決まって4くちでたべるんだ~」と返した。この時期になるとよく食べるのが、みかん。子どもの頃、いつも家にみかんが一箱届いていた。愛知県に住むおじいちゃんとおばあちゃんから届くみかんがいつも楽しみだった。私の祖父母は父方も母方もどちらも愛知県にすんでいたため、いつでもすぐに会いにいけるということはなく、会いにいくのは夏休みと冬休みの特別なイベントとなっていた。「夏休みになにしていた?」と聞かれたら、まちがいなく愛知県に毎年いっていたと答える。ただ、会いに行った先で、なにをしたかというのは実はほとんど覚えていない。それどころか夏休みになにをしたか覚えているか質問されても、具体的に〇〇をした!というようなことを何一つ思い出せない。子ども時代の私の頭は「今日はサッカーできるのか」という目の前のことでいっぱいだったのだと思う。いろんなイベントに連れていってくれたであろう両親を思うと申し訳なくなるほど。そんな親泣かせの私の心許ない記憶力。小学校低学年の時に亡くなってしまったおじいちゃんとおばあちゃんのことははっきりと顔を思い出すことができない。おじいちゃんとの思い出というと、習字で書いた文字をファックスで送っていたということやおじいちゃんの家にあった古い立派な将棋盤と囲碁盤を欲しいとねだり、もらったことぐらい。でもこのふたつの思い出は、ファックスっておもしろい!とか、将棋盤ってかっこいい!という想いが強く、おじいちゃんの言葉や表情がよみがえってくるわけではない。でもひとつだけ言葉や表情がのこっている思い出がある。それがおじいちゃんの家でみかんを食べた時のこと。おじいちゃんの家は古く、日本家屋のような家だった。玄関の引き戸をガラガラと開けると土間が続いている。土間から左にあがると、掘りごたつがある。その掘りごたつで足をぶらぶらさせながら、こたつの上に置いてあるみかんを食べるのだ。みかんが大好きだった私は、指先を黄色くしながら、3つ4つとみかんをいつも食べていた。みかんの皮は小さくぽろぽろとちぎれてしまっていた。できる限りちぎれないように大きな皮になるようにむいてみようと挑戦してみるも、結果は変わらず、やはりちぎれた皮が散らばってしまっていた。それをみていたおじいちゃんが、笑いながらこういった。「そんなみかんが好きなら、きれいにみかんの皮がむける方法を教えてやる」そういっておじいちゃんはおもむろにみかんをひとつ手に取り、皮をむき始める。皮をどうむいていたのかはあまり見えず、なんだなんだ?とのぞいてみた。そうすると「ほらできた!」と一言、綺麗に4つに花のようにひらいたみかんがおじいちゃんの手からあらわれた。そしてそこからひとかけらのみかんをとり、口に放り込んだ。4つのかけらを食べ終わったあとのみかんの皮は白い花のようだった。やってみようと見よう見まねでみかんをわけてみる。でも最初がうまくいかない。「反対側からむいてごらん」よくもわからないままだったけれど、言葉通りひっくり返して反対からむいてみる。ぶしゅっとみかんに指がささり、果汁がこぼれだす。「難しかったか」そういいながら笑っていた。「何度もやっていればできるようになる」そういったあと、最初ふくらみをみながらわけること、白いすじが自然にとれやすい向き、なんこかコツを教えてくれた。ついでに緑のへたをとると皮をむかなくてもみかんの数がわかることなども。  それほど多く会えなかったおじいちゃんだけれども、こうして教えてもらったことが、20年以上経った今の自分の中の当たり前になっている。こんなにわかりやすく自分の一部になることは少ないと思う。見えない部分も含め、今の私のほとんどがだれかから学んだことだと思う。自分にない知識や技術をもつ人に出会うこと。とても大きな出会いなのだと思う。なかなか帰省するにも悩ましい状況だけれども、きっと大きな出会いはまちにも、近所にも、たくさんあるのだと思う。私自身がひとつの出会いになれたら嬉しい。でもそれだけでなく、たくさんの出会いをみつけやすい環境を子どもたちにつくることこそやりたいこと。これまでの出会いや、これからの出会いを、どれだけ子どもたちにワクワクとしてつなげていけるのか、そんな幸せな想像を膨らませながら新しい年を迎えようと思います!

三尾 新

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