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【おたよりコラム】小さな自信は遊びの中で

 長いゴールデンウィークが終わり日常が戻る。夏のような日が多いゴールデンウィークだった。きっと子どものころの私だったら、ひたすらに外で過ごしていたのではないかな、と思う。  とん、とん、とん、とん、家の前にボールの音が響く。私の家の前はすぐ道路だったけれど、住宅地の一番はじっこで、道路の向かいは土手になっているような場所。車もそう通らない。なので、時間ができるたび、家の前の道路で遊んでいた。チョークで道路に絵を描いたり、縄跳びや竹馬をしたり、そして大好きだったサッカーも。ちょっと体を動かすのはいつも家の前の道路だった。何度も家の壁にボールをぶつけて遊んでいた。跳ね返ったボールが道路反対の土手のしげみに入って苦労することなんてしょっちゅう。表札を的にしていたら、割れて怒られたこともあった。たくさんの遊びをした家の前だけれど、きっと一番たくさんしていたのは、サッカーのリフティング。ボールを落とさないように、浮いているボールをトントンとリズムよく連続でけり続ける技。最初は3回でも続けることが難しい。ひたすら練習。来る日も来る日も練習。でもこれがおもしろい。できた回数が1回でもふえると「上手くなった」と自信になるし、どんどん楽しくなってくる。「あと1回」「もうすこしで新記録だったのに」そう思いながら何度も挑戦する。そして、1回でも多くできた時、10回を超えた時、100回を超えた時、1000回を超えた時、ものすごい達成感を感じることができた。そして、この数を数えながらおこなうリフティング、ボールを落とすことができないので、集中力が試される。一瞬でも気を抜いたらボールは落ちてしまう。10回、20回なら数秒の話だけれど、100回になると1分。1000回ともなると10分間ボールに集中し続けることになる。小学生の子が、これだけ長い時間、一瞬も気を抜かず集中し続けるということはなかなかできることではない。そう今になって思う。数を数えながら、集中して同じ動作をひたすら繰り返していくという作業は、ぐっと集中する力の土台になっていたように思う。

 これはリフティングに限ったことではない。縄跳びもそう。けん玉やお手玉でもいい。集中しながら回数が数えられるものや、タイムを計るものなどでも同じことがいえると思う。何回も何回も楽しみながら繰り返し、「できた」という感覚をたくさんたくさん感じてほしい。失敗しても諦めずにチャレンジしたらできるようになったという経験は、ものすごく大きな自信につながる。自分はできる。その感覚をなんども繰り返すことで、どんな難しいことでもやってみれば、自分はできるという自信につながっていく。その自信はチャレンジするための一歩を踏み出す力になる。その一歩を踏み出す自信をつくるのは、小さな「できた」の繰り返しが一番の近道のように思う。とはいえ、ひとりで、そのモチベーションを持ち続けるのは難しいもの。1回ふえた!1秒早くなった!たいしたことないようなことかもしれないけれど、それを一緒になって思いっきり喜んでくれる存在は「よし、もう一回やってみよう!」「次も新記録をめざそう!」と後押ししてくれる大きな力になる。

 新しい環境になれてきたこの時期。どんどん新しい挑戦をしてみてほしい。でもこれは子どもだけ、ではなく大人も同じかな、と思う。大人になると、なんとなく限界を判断し、できないことへの挑戦をあまりしなくなってしまうのだと思う。それでもいつまでも子どもたちと同じように、できるを増やしていけるよう、できないことに挑戦し続け、乗り越えていく、そんな姿を見せる大人でありたいなぁと思う。できることよりもできないことの方が多い。きっとできる姿よりもたくさんの失敗する姿をみせることになると思う。恥ずかしいし、隠せるなら隠したいけれど、大人の失敗をみて、失敗してもいいんだと勇気をもらう子がいると信じて、どんどん挑戦をみせていこうと思う。

三尾 新

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