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【おたよりコラム】子どものころの自分へ

 「うまくやらなきゃ」「もし失敗したらどうしよう」「どう思われるかな?」そんなことばかりが頭によぎり、手足に力が入らなくなる。ふわふわと落ち着かない感覚。頭は真っ白になって、不安でいっぱいになる。それが人前でなにかやることになったときの私だった。失敗したところでたいしたことない、ということもなんとなく頭ではわかっているものの、悪いイメージがどんどん膨らんで怖くなっていく。この勝手に広がっていく想像力は本当に厄介で、怖い話をきいたときやお化け屋敷のときにもしっかり働いてくれた。お化けそのものが怖いのか、ときかれるとそうではない。自分の想像が怖いのだ。「ベッドの隙間になにかいたら」「カーテンの後ろに実は」「鏡の奥でなにかが」「自分の後ろに」もう想像が止まらなくなる。そうすると、夜のトイレはもちろん、暗かった2階に電気をつけてもひとりで行けなくなった。こんな自分でコントロールできない想像力が大嫌いだったし、堂々と発表したり、人前で笑いをとっている友だちが心から羨ましかった。

 でも、このどうしようもない想像力が大嫌いで、悩んでいた子どものころの自分に伝えたい。自分自身を怖がらせ、不安にさせてくるような想像力を持っている子にはとても大きな才能があるんだよ、と。しかも才能は1つではなく2つも。発表するときとか、人前に出て間違えるのは嫌だよね。でもなんで嫌かというと「上手と思われたい!」「成功してすごいと思われたい!」という気持ちがあると思うの。こういう気持ちがある人は「できている自分」「かっこいい自分」を想像できていて、そういう自分になりたいって心で思い描けているんだと思う。そうするとだれかに失敗は見られたくないからこっそりかもしれないけれど、きっとたくさんたくさん練習するんじゃないかなぁと思う。そうやってできることを増やして自分自身を高めていくことができる。これはとても大きな才能で『どんどん成長していく力』になっていると思うの。もうひとつは「失敗するかも」「もしかしたら」といろんな不安を想像してしまうことがそのままみんなに必要とされる大きな才能なの。その才能は計画をたてたり、新しいことをしようとするときに力を発揮するのだけれど、今はまだその力を使う時が少ないの。家だと計画を立てるのはお父さんお母さんだし、学校だと先生がしていて、なかなか子どもの頃はその役割がやってこないんだ。でも必ずその役割がみんなにもくるようになる。その時に想像が得意だと先のことを想像して「もしかしたら」「ここで失敗するかも」といろいろ考えることができる。そうすると「じゃあ失敗しないようにこうしたらいいんじゃないかな」とよい方法を思いつくことができるようになる。このよい方法は想像力がある人の方が見つけるのはまちがいなく得意なんだ。  みんなのもっている未来をイメージできる想像力が大きくなって大きな強みになるように、「うまくできる」という幸せなイメージも「うまくいかない」という怖いイメージもたくさんたくさん想像してみてほしいんだ。そしてその想像したことが、どれくらいあっているのか、想像があたったらどうしたらいいか、そんなことまで想像してみてほしい。いまは怖いイメージばかりみせてくる想像力だけど、たくさん想像するうちに使いこなせるようになって、みんなの味方になってくれるから。

 大人になった今でも想像力で悩むことがある。このコラムも新しいスタイルで書いている今、「微妙」「読みづらい」「前の方がよい」「なにも伝わってこない」と思われるかもと、悪い想像が頭の中にいっぱいになったりする。それでもその怖い想像通りにはならないよ、大丈夫!と自分に言い聞かせながら、挑戦してみているよ。失敗して嫌な気持ちになることもあるかもしれないけれど、一緒にたくさん想像力をふくらませながら、挑戦して、たくさんのことを乗り越えていこう。

三尾 新

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