【おたよりコラム】みんなで

 あなたは高校の先生です。ある日、授業の一環として稲刈りの体験作業があり、田植えの体験授業のために生徒を連れて出かけました。稲刈りの体験作業の後、農家のおばあさんがクラスの生徒全員におにぎりを握ってくれました。しかし、多くの生徒は他人の握ったおにぎりは食べられないと、たくさんのおにぎりを残してしまいました。さて、あなたは、おにぎりを食べられない生徒に対しどのように指導しますか。またあなたはこの事実をおばあさんにどのように話しますか。  これは2019年2月にある大学入試の2次試験でだされた小論文のテーマなのですが、ちょっと問題を置き換えて考えてみて欲しいのです。もしお子さんと農業体験にいっておにぎりが振る舞われたらどうしますか?子どもたちにはどう伝えますか?「ひとつの正しい答え」というものはないと思います。場合によっては、他人からもらったものは食べてはいけません。そういう伝え方をすることもあるでしょう。人がさわったものには抵抗がある。そう感じる方もいるかもしれません。実際にこのテーマが出題された背景には、他人の握ったおにぎりは食べられないという子が半数以上いるという結果のアンケートが元になっているのです。ベネッセが小学生の子どもを持つ保護者を対象にした「お子さまは、どのおにぎりなら食べられますか?」というアンケート。結果は、お母さんが握ったものであれば8割以上が食べられるが、友人・知人が握ったものだと半分を切ってしまうとのものだった。親が握ったおにぎりを食べられない子が5人に1人もいるということにも驚きでしたが、半分以上の子が友だちが作ったおにぎりを食べられないということにはショックを受けた。私が子どもたちをみている感じだと、そんなことないでしょ?と思いもするのですが、このような結果だったそう。衛生面の心配などもあるのかもしれない。でも今回のことはそういうことではない。誰がさわったごはんであれ抵抗のない私は、昔ながらのタイプなのかもしれない。でもそれは昔と今とを比べるものではない気もする。ではどうしてこのような結果になっているのか。私は思う。どれだけ「みんなで」という経験をしてきたか、なのではないかな、と。どれだけ、みんなでつくる、みんなでたべる、みんなでよごしあう、みんなで遊びつくす、みんなで触れ合う、みんなで笑い合うをしてきたか。その経験から感じ、考え方は変わってくると思うからだ。みんなでつくる経験は、つくる楽しさとともにつくったものを食べてもらうときの気持ちを考えられるようになる。みんなであそぶ経験は、あそぶ楽しさとともに相手の気持ちを考えられるようになる。みんなでよごしあう経験は、よごれていることへの過剰な反応をしなくてすむようになる。「みんなで」という経験はその人の人間味を深めてくれる大事な経験だと思う。食に関して言えば、「みんなで」できる餅つきやうどん作り、そういった場はまさに最高な経験の場なのだと思う。そしてもうひとつ私が気になったのは、食べられないものをいただいたとして、その場に残して置いておくだろうか。作ったものが残されている、そんな状況をみた作り手の気持ちを察することはできないのだろうか。ひとりひとり受け取ったあとで、考えればいいことのようにも思う。学校の先生ではないけれど、私自身も子どもに伝える仕事をしているひとり。このような状況になった時点でそれまでの子どもたちへの接し方、伝え方に失敗しているように感じる。学業も大事だが、どんな人になって欲しいのか、なにを大切にして欲しいのか、そんなベースとなる部分を日々どれだけ伝え、心に残すことができるのか。それこそが先生として常に考え続けないといけない部分なのではないかなと思うからだ。この小論文は医学部の入試にでてきているので、マイノリティへの配慮、病気の告知といった難しい場で、どのように伝えるのかをみているのかもしれない。でも、私が気になったのは、この問題の背景にある子どもたちの食べられないや受け取らないという姿、そしてその状況を引き起こしてしまった先生のあり方。

 夏のキャンプ、みんなでうどんをつくったことがある。手で粉をこねてつくる。誰ひとりとして他人が触ったものだから嫌という子はいなかった。そんな状況が当たり前な場を作り続けていきたい。

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