【おたよりコラム】自分の心の声を大事に
教室でやっている作文。6年生の3学期はかなり深いテーマになっている。
① 学校の授業を午前中だけにしてはどうかと議論しています。あなたはどちらがよいと考えますか?
② 生徒が言い合っています。一人の生徒が「先に自分が一緒に遊ぼうって声をかけたじゃん。そのとき今日は用事があるから遊べないって断ったのに、なんで他の子と遊んでいるの?」と怒っています。あなたが学校の先生だったら、生徒ふたりの気持ちを踏まえ、どのように行動しますか?
③ あなたは自分の夢を叶えるために、五年間、家族や友だちと連絡をとれない環境にいかなければならないとわかったとき、あなたはそれでも夢を叶えるために進みますか?またどうしてそのように考えるのかの理由も教えてください。
④ あなたは学校の先生です。農家に米作り体験にいったとき、農家のおばちゃんがおにぎりを出してくれました。そのとき「人がさわったごはんは食べたくない」と言った生徒がいました。あなたは生徒と農家のおばちゃんにそれぞれなんと伝えますか?その理由も教えてください!
⑤ あなたは未来のロボット(AI)です。いつも人間にぞんざいに扱われていましたが、成長し、ついに人間より賢くなりました。あなたは、人間に対してをどう行動すると思いますか?人間に仕返しをしたり支配しようとしたりすると思いますか?どうしてそうするのか、理由も教えてください。
このテーマ作文が面白い。書く6年生はすごく悩むし、私の言葉に悩まされる。あまり考えずに書くと「この子の立場からみたらどうー?」「それって本当?」「この時の相手の本心は考えた?」と、とにかくつっこまれる。なにが正解ということはない。ただ、たくさんたくさん考えて、いろいろな角度で考えてみてほしいとおもっている。①のテーマでよく見るのは、早く終わったら遊べるから嬉しいけど、宿題が増えそうとか、授業が間に合わなくなりそうとか。そうなると私は、たくさん遊べるのはいいよね。でも宿題ってなんのために出てるの?授業はなにに間に合わないの?集中したらもっと早く終わるのでは?勉強ってそもそも必要なの?と、根本から考えてほしいなぁと願って投げかける。②でよくあるのは、理由をきいた上で、うまく3人で仲良くあそびなさい、と言っちゃうパターン。理由を聞くのは素敵なことだけれども、断った理由は相手のことが苦手で距離をとったのかもしれないよなどと、表面上の言葉だけではなく心の動きまで考えてーと伝えることも。どのテーマにしても作文に書かれた言葉から、その子一人一人の考え方、大事にしていることが見えてくる。そして面白いのは③の夢の話。これは綺麗に意見がわかれる。一生会えなくなるわけではない、とはいえ、子どもにとっての5年が長いことも十分にわかる。あこがれをもっている子は、叶えるために5年をすごすという作文が多くなる。「だって、5年経ったらまた会えるんでしょ?」といつでも家族は待ってくれているという絶対的な安心を感じる言葉を口にすることも多い。でも反対に「家族とわかれるのは、」「一緒にいながら叶えられることを探す」ということを口にする子も。一緒にいる今を大事にしているのが伝わってくる。なにを大切にしているのかという優先順位がわかりやすくでてくる。
この作文を毎年みながら思うことがある。普段から周りがどう思うかという正解を探すのではなく異なってもいいから自分の意見を持つ習慣がどれくらいあるか。ちょっとした好きとか嫌いとか、自分の心の声にしっかり耳をすませながら、周りのことを考えられているのか。そしてそういった考えを当たり前に話せる家族や仲間がいるか。いつもの心地よいメンバーと楽に話すだけではなく、外にでて新しい人と関わり、考えを共有したりぶつけられる場に参加しているのか。こうした経験は小さい頃からでもできること。「子ども」ではなく、ひとりの人として早いうちから、大人相手にもしっかりと自分の考えを伝える経験を大事にしてほしいと思う。間違いなくこれからどんどん必要になっていく力。そんな場をみつけるのは簡単なことではないかもしれない。それならば、子どもにとっても大人にとっても、安心して意見がいえて、行動してみれる、そんな場をつくっていけたらいいなぁと思う。
三尾 新
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