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【おたよりコラム】迷惑なひとりでできる

 私が小学4年生ぐらいのとき、横浜駅のまわりの繁華街は、いつも賑わっていて、かっこいい若者、おしゃれな人がたくさんいる街というイメージがあった。その横浜ですごく鮮明に覚えているできごとがある。人のたくさんいる駅ビルの入り口で、母におもいっきり頬をはたかれたのだ。  それは横浜駅に家族でおでかけしにいった最後、お店がたくさん並ぶメインの通りの一番奥にある東急ハンズというお店に寄った後のこと、さぁ駅に戻って家に帰ろうか、そんなタイミング。家族4人で駅に向かって歩いていた。駅に向かう途中、父がヨドバシカメラに、母と姉が先のお店で寄りたいところがあるとかで、いったん別々で行動し、あとで横浜駅で合流することになった。少年だった私は父のヨドバシカメラに一緒にいくことになった。「お父さんと一緒にいるんだよ!」と母に言われ、私は思った。自分はもうひとりで駅までの道もわかるし、なんで親と一緒じゃないといけないの?なんで自由にさせてもらえないの?なんで子ども扱いするんだ?大人に見守られている自分の姿をみられるなんて恥ずかしい!自分はもうひとりでなんでもできる!私の心は勘違いの自信と親への反抗心が溢れていた。そこからの私の行動はシンプルなもので、絶好のチャンス!とばかりにヨドバシカメラで商品をみている父の目を盗んで、店から逃げだしたのだ。お店を出て、通りにでると、たくさんの大人の流れ。その中をひとりで歩いていることに、心からワクワクしていた。大人の中をひとりで歩くことで、自分も大人になったような誇らしい気持ちで、目的の駅に向かって歩く。とても気持ちよくなっていた。ただ父も私がいないことにすぐ気づいたのだろう。一人で歩いていた時間はそんなに長い時間じゃなかった。おそらく歩いた距離は200mもないんじゃないかと思う。駅ビルに着く直前で父に見つかり、大人気分での横浜散策は終わってしまった。「もっとひとりでいけたのに」「ちゃんと道もあっていたし、もう大人と変わらないでしょ?」「危ない危ないといわれていたけど、大丈夫だったでしょ?」そんなことを思いつつ、父と駅ビルにむかって少し歩くと、父が連絡していたのだろう、駅ビルから母とその後ろに姉がついて歩いてくる姿が見えた。そのまま母がツカツカとまっすぐ歩いてくる。そしてそのまま冒頭の出来事に。叩かれた直後は、叩かれたという状況が全くつかめず「へ?なんでそんな怒ってるの?」と私の中の刻が止まっていた。「何やってるの!なんでひとりでいっちゃうの!」といった母は涙目になっていた。その一言を残し、姉の手を引いて、引き返して歩いていってしまった。この時の後ろ姿が、光景が、「大変なことをしたんだ」という後悔の気持ちと一緒に、はっきりと記憶に残っている。  子どもの頃の私は、親との約束を少しだけ破り、自分の判断で動いてしまうところがあった。あくまで「少し」であって、ちょっとしたことだとそのときの私は思っているのだけど、親からしたら全く「少し」のことではなかったのだろうなと、今になって思う。成長していく子どもたちはどんどんできることが増え、様々なことに対して「ひとりでできる」と自信を持つようになる。親に対して反抗することもある。どう考えても根拠のない自信で、大人からみたら失敗するだろうなということもある。それでも「自分はできる」そう思いながら挑戦することが、大きな成長につながると思うのです。自信をもってやったけど、うまくいかなかった。それも、また考えることにつながるのだと思います。間近に迫った冬休み、子どもたちを信じて、どんどんいろいろなことに挑戦させてあげてほしいと思います。ただ、私のように人に心配や迷惑をかけることはダメなこと。そういった線引きをきちんと伝えることもとても大切なこと。そんなときはこれはダメだということ、本当に心配したんだということを思ったまま伝えてあげてください。そしてまた成長を待っていてあげてください。すぐに変化は出ず、繰り返してしまうことも多いと思うけれど、数年後か、はたまた大人になるころか、時間が経ってしまっても、まっすぐ伝えた想いはいつか必ず伝わる。私はそう信じています。

三尾 新

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